なぜ人は、スーパーのチラシでは1円でも安いモノを探すのに、株は高くなると買って、下がると売ってしまうのか

株価の上昇と下落のグラフのイラスト お金の話

人は買い物をするとき、少しでも安く買いたいと思う。

チラシを見比べて、「こっちのスーパーのほうが卵が10円安い」「野菜が1円安い」と分かれば、わざわざそちらのスーパーまで行く。ガソリンだって、「こっちのスタンドのほうが1円安い」と分かれば、そちらに行きたくなる。たった数円、数十円の違いでも、**「安いほうが得だ」**と思うからだ。

ところが、株になると話が変わる。株価が上がっていると「まだ上がるかもしれない」と思って買いたくなる。逆に下がると「もっと下がるかもしれない」と怖くなって、売りたくなる。
ついこの前まで「金」が高騰して、みんなが金の延べ棒を買いに行列を作ってたのに、値段が下がった今はぜんぜん並んでない。「当時より安くなったのに」である。

みんな少しでも安くなったら買いたくなるハズなのに、なぜ株(投資)では高く買って、安く売ってしまうのだろう。実際、自分にもそんな苦い経験がある。

好きだったから、という理由で買った株

株を始めたばかりの頃、当時ハマっていたゴルフの予約サイトの株を買ったことがある。

理由は単純だった。「自分がよく使っているサービスだから」。使っていて便利だし、株価も調子よく上がっていた時期だった。「これは伸びるだろう」、そう思って買った。

ところが、しばらくして株式分割があり、そこから株価が下がり始めた。最初は「まあ、そのうち戻るだろう」くらいに思っていた。ところが、下がれば下がるほど怖くなってくる。そして結局、数十万円の損失を出して売ってしまった。

高値で買って、下がったところで売る。今考えれば、教科書に載っているような「損失回避」の心理に、そのままハマっていたのだと思う。

高くなると「安心」してしまう

株価が上がっているときって、不思議と安心する。ニュースでも「株価が上昇」「過去最高値」といった話が出てくる。周りからも「株で儲かった」「この株が上がった」なんて話が聞こえてくる。すると、「みんな買っているなら、自分も」という気持ちになってくる。

自分があのゴルフ予約サイトの株を買ったときも、まさにこれだった。サービスへの愛着と、株価が調子よく上がっていたタイミングが重なって、冷静に考えるよりも「乗り遅れたくない」という気持ちが先に立っていたのだと思う。

行動経済学でいう**「群集心理」**も、こういうところに表れる。人は、みんなが買っているものを見ると、それだけで「良さそうだ」と感じやすい。株価が上がっていること自体が、「まだ上がる」という理由になってしまうのだ。

安くなると、怖くなる

逆に株価が下がったときは、もっと分かりやすい。

普通の買い物なら「20%安くなった。お買い得だ」となるところが、株では「もっと下がったらどうしよう」となる。これも行動経済学でいう**「損失回避」**という心理だ。人間は、同じ金額なら「儲かった喜び」よりも「損した痛み」を強く感じやすい。だから含み損が膨らんでくると、「これ以上は耐えられない」という気持ちが強くなる。

分割後、じりじりと値下がりしていくあの株を見ながら、最後に売ったときの感覚は、まさにこれだった。そして、こういうときに限って、その後に株価が戻ったりする。投資をしている人なら、一度くらい経験があるのではないだろうか。

今ならどうするか

今から思えば、いくつも反省点がある。

  • 「好きなサービスだから」という理由だけで買わず、もっと情報を集めてから判断する
  • 株価が上がっているという雰囲気だけで、飛びつかない
  • 下がったからという理由だけで、怖くなって売らない

もちろん、今でも完璧にできる自信はない。ただ、当時の失敗のおかげで、自分がどういうときに感情に流されやすいのかは、身をもって理解できた。

これは、数十万円の損失と引き換えにした、かなり高い授業料だったと思う。

投資で一番難しいのは「自分」なのかもしれない

投資で難しいのは、実は「何を買うか」だけではない。むしろ、「自分の感情をどう扱うか」のほうが難しいのかもしれない。

スーパーでは1円でも安い野菜を探すのだから、その冷静さを株でも発揮すればいい。頭では分かっている。でも、株価が上がっていると欲しくなるし、下がると怖くなる。人間だから、仕方がない。

だから僕は、「自分は合理的に判断できる」とは思わないようにしている。人間には、損を避けたい、みんなと同じ行動をしたい、上がっているものを見ると「まだ上がる」と思いたくなる。そんな心理的なクセがある。

それを知っているだけでも、株を売買するときに、

「今の自分は、本当に冷静なのか?」

と、一度立ち止まることができる。

同じように、株を「売れなくなる」心理について書いた記事もあるので、興味があれば合わせて読んでみてください。


50代になった今は、投資で儲けることだけではなく、自分の感情に振り回されず、せっかく築いた資産を守ることも大切だと思っている。

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